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溶接技能の承継を目指して レーザーを使った自動化装置の開発に挑む 浜名レーザー株式会社


浜名レーザー株式会社 取締役 安田忠史さん(12期生)

静岡県浜松市西区呉松町1955番1 光産業創成大学院大学内 

TEL:053-484-2621(直通) 053-484-2501(代表)   FAX:053-487-3012 E-mail:yasuda@gpi.ac.jp

■「レーザーによるものづくり中核人材育成講座」を経て入学

 安田さんは、レーザーを使った金型の肉盛補修を主要事業とする企業から派遣されて本学に入学。新たなレーザー装置の開発を目的とする浜名レーザー株式会社の設立とあわせて取締役となり、2足のわらじで研究を進めている。
 入学のきっかけは本学で開催する「レーザーによるものづくり中核人材育成講座」に参加したこと。もともとレーザーを使った仕事をしていたため「レーザーについてもっと深く知るために」講座に参加した。
 「金型や治工具を補修する肉盛装置はドイツの企業から購入したものを使っているのですが、講座を受けてレーザーのことを詳しく知るうちに自分たちでも開発できるのではと思ったのです」と安田さん。レーザー関連の技術は、ドイツ企業が先行しており、日本国内で使われているレーザー装置もほとんどがドイツ製。日本製の装置が開発できれば、目的に応じた使い勝手やコストの面でも大幅な改善が期待される。そこ
で、レーザー装置の開発と販売を主要事業とする別会社として浜名レーザー株式会社が設立され、開発の陣頭指揮を安田さんがとることになった。
 表向きは新製品の開発を目的として入学した安田さんだが、研究テーマとしては「技能承継」に軸足を置いている。溶接技能を身に付けた人材の減少を背景に、その一部を自動化装置に置き換えることで技能を絶やさない方法を探ろうというものだ。「金型や治工具の補修は16倍の顕微鏡を覗いて、手元で細かな作業をする仕事です。合わない人は合わず、せっかく採用した人材も嫌になってやめていくということが続いてい
ました。」
 溶接工に限らず、製造現場の人材不足は大きな問題になりつつある。日本の人口自体が減っているためやむを得ない側面もあるが、日本に根付く高度な技能を次代に残すという観点からは、職人の技能を体得した自動化装置の登場は大いに待ち望まれている。

■経営を学び、一段上の視点を持つ

学内インキュベーションルーム前で
安田忠史さん(左)と、毛利社長(右)

 ところで安田さんに大学生時代の専攻を聞いたところ、思いがけず「経済学でした」という返事が返ってきた。新卒で就職した先は商社、職種は営業。「他人の商品を右から左に流して商売している感じが、自分の生き方としてイヤだった」ので、ものづくりの会社に転職した。よくよく聞くと「学生時代も工場の現場でアルバイトをやっていたのです。だからものづくりの方があっている」という。
 当初は装置づくりを目的に入学したが、必修カリキュラムの経営学も学ぶうちに、製造の一段上の視点から会社全体を見られるようになった。その結果、先述のように「技能承継」をテーマに研究を進めることになった。「業界でもこのテーマに取り組んでいるところはまだ多くはありません。一歩先んじた展開ができるのではと期待しています」と抱負を語る。
 安田さんが取締役を務める浜名レーザーの定款には、光学設計、レーザー製造、コンサルティングなど幅広い事業が書かれている。本学で学び論文で表現することをそのまま事業化できる土俵がすでに用意されている。「まずは開発中の装置を完成させ、これをどのように普及・販売していくかがこれからの課題」という安田さん。国産の優れたレーザー装置の完成に向けて準備は整っているようだ。

指導教員からのメッセージ

増田靖教授

現場学習型の安田さんの問題解決力に期待!

 安田さんは現場学習型ビジネスマンと言えます。学習理論では、行動主義、認知主義、状況主義と理論が展開しています。現在注目されているアクティヴラーニングは状況主義の理論に基づいています。教室で受動的に学ぶのではなく、学生が能動的に学べるように導く学習方法です。職務教育では、現場での体験学習と言えます。安田さんは、受動的な学習よりも、現場で自ら考え、行動して、仕事を習得していくタイプです。「レーザー装置開発」の発想も自身の体験から得ました。また、本学が提供する実学としての経営学のプログラムを通して、現場学習をより上位の視点から見ることができるようになり、現場技能の形式知化による自動化と現場技能者の暗黙知の現場における「技能承継」を研究のテーマにしました。そして、日々現場での問題解決に向かって実践(事業推進=研究)しています。製造現場に限らず現場の「技能承継」は大きな問題となっています。他の中小企業の問題解決にも役立つ事業実践と研究の成果を期待しています。
2018年7月掲載