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既存市場の縮小を尻目に自社商品を開発 その効果を立証するエビデンスの取得に本学を活用 東洋レヂン株式会社


東洋レヂン株式会社 取締役 市場開発部 部長 深澤 聡さん

Profile  
工業高校を卒業後、化学系の研究職や運送会社を経て、運送業で創業。事業を弟に譲った後、東洋レヂン株式会社に入社し現在に至る。

静岡県富士市厚原2104-1 TEL.0545-71-2023 http://www.resin.co.jp

■皮膚刺激という新医療市場を開拓

深澤聡さん(本学在学生)

 深澤さんが勤務する東洋レヂン株式会社は、各種樹脂の着色加工や再生加工、大手医療機器メーカーの医療機器部品の製造などを主要業務とする企業。一見、光とは関係がなさそうだが、下請けからの脱却をかけた自社商品の開発・製造・販売事業で、光技術の支援が必要になった。
 そもそも同社が自社商品の開発に取り組んだ理由は、長年部品を提供してきた医療機器メーカーの海外移管に伴い、従来事業の先行きが怪しくなってきたことにある。海外に製造拠点を移す取引先を追って海外に事業展開をする選択肢もあった。あるいは固有技術を活かして他の顧客開拓に乗り出す手もあった。しかし同社は、「東洋医学用具」の自社開発により独自ブランドの確立を目指す道を選んだ。
 「当社の社長は30年間にわたって鍼灸針の研究をしていました。その間、針を刺すのではなく、皮膚の上に置くだけで症状が軽くなる人を何人も見て、皮膚に刺す針ではなく皮膚に置くプラスチックで同じ効果が得られるのではと考えたのです」と深澤さん。この発想を3つの幸運が後押しした。1つは、過去に鍼灸用品を手掛けた研究者が社内にいたこと。2つ目は薬事法を理解する社員がいたこと。3つ目は独自の特殊成形技術で量産が可能であったことだ。


 こうした背景のもと、同社は押さえる刺激を与える『ソマセプト』と、撫でる刺激を与える『ソマレゾン』を開発。鍼灸師に使ってもらったところ効果があることは分かったが、エビデンスがないために積極的な拡販に踏み出せずにいた。
 そこで市場開拓を担当する深澤さんが動いた。
 「外部研究機関の動物実験で『ソマレゾン』にモルヒネ効果があることが分かった。次は人間に対する効果を立証するため、『ソマレゾン』の刺激による脳内の変化を測定したいと考えたのです。普通は皮膚を押さえる力が強くなると痛みを感じるはずなのですが、『ソマレゾン』を貼った人はそうでない人よりも痛みが軽減されることが分かりました。この時、痛みの起こる圧力を数値化することと、脳内ではどのような反応が起こっているかを観察する必要があった」と深澤さん。そのために、光産業創成大学院大学の協力を求めた。
 入学後、痛みの程度を数値化する方法を検討。製品を貼ることによって軽減する痛みの程度を計測し、さらに数値化することによって、開発した製品の効果を立証した。さらに、その結果を脳のペインマトリックスと照らし合わせ、痛みの軽減を評価した。 

■こだわらないことにこだわる

 深澤さんの肩書は「取締役 市場開発部 部長」。ミッションは「自社商品を売る営業活動より以前の“道“をつくること」。『ソマセプト』も『ソマレゾン』も、皮膚の上に置くことで痛みを緩和する新しい鍼灸用品の市場を開いた。今までになかった市場を創るから、他社と競争をする必要もなく、常に勝ち組になれる。既存市場の隙間にくさびを打ちこみ、こじ開け、自社の強みを生かした商品を作る、それが深澤さんの役割である。そして、その商品の社会における位置づけや効果のほどを立証するために、本学が力を添えた。
 深澤さんに本学入学のメリットを聞いたところ次の答えが返ってきた。
 「発表資料のとりまとめの指導をいただくなど、対外的な説明準備の段取りが良くなり、人に伝える能力を磨くことができました。また、大学院生という身分を使って高名な先生にアプローチし、実験の相談に乗っていただくこともできました。企業の一社員では使えない実験道具を使わせていただけたことも成果に結びついています。」
 「こだわらないことにこだわりを置く」ことを信条とする深澤さん、さまざまな経験と心強いネットワークを活かし、既成の思考の枠をはずしながら、これからもブルーオーシャンの開拓に臨んでいくのだろう。

皮膚刺激を用いて「痛み」を緩和する東洋レヂン㈱の医療器具シリーズ「ソマニクス」には、「ソマセプト」「ソマレゾン」ほか5ブランドがある。
2018年1月掲載