グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム >  イノベーション事例 >  光×中小企業 >  塗装業の限界を感じて、レーザーの世界へ。レーザーによる表面処理の標準化に挑む。 株式会社トヨコー

塗装業の限界を感じて、レーザーの世界へ。レーザーによる表面処理の標準化に挑む。 株式会社トヨコー


塗装業の限界を感じて、レーザーの世界へ。レーザーによる表面処理の標準化に挑む。

株式会社トヨコー 代表取締役 豊澤一晃 さん

Profile デザイン会社を経て、平成2003年に実家である株式会社トヨコーに入社、2008年本学入学、2014年に代表取締役に就任。

株式会社トヨコー 静岡県富士市青島町39番地 TEL. 0545-53-1045 
事業内容【蘇生事業】屋根・壁の防水・断熱・補強工事(蘇生®工法)
    【光事業】 レーザークリーニング装置及び周辺機器類の製造・販売(CoolLaser® クーレーザー®)

■業態転換を促す新工法を開発

株式会社トヨコー
代表取締役 豊澤一晃さん
(本学同窓生)

豊澤社長は父親が創業した株式会社トヨコーに2003年に入社。当時は一般的な塗装業が主力だったが、先行きを危ぶみ、オンリーワン商材であって全国展開可能な屋根の塗装防水工法を新規開発。その後、会社を長期的に成長させるため、新たに海外展開可能な商材の開発を目指してレーザーに着眼した。県内の中小企業支援団体から本学の紹介を受け、「最初は産学連携のつもり」で、本学を訪問したところ、「そういうテーマなら入学して腰を据えて取り組んだ方がいい」とアドバイスされ、入学に踏み切った。
 
「経営の安定化を目指すために国交省や自治体などに提案できる仕事を考えていました。塗替えでいちばん重要なことは、塗る前の下地処理と分かっていましたので、素人ながらオンリーワン技術による下地処理から1点突破しようと思いついたのです。これなら大手も参入しにくいですし、産業としても大きくなるだろうという読みがありました。いろいろ調べてみると、レーザーを使うのが良さそうだ、と」
 
そこで本学を訪問し、ほどなく入学を決意する。そして6年間、週に1回の頻度で通い続け、構想は現実となった。研究・開発したのは「レーザー塗膜除去工法」。レーザーを照射して、橋梁などの塗装やサビを溶融・蒸散する新工法だ。これまでの下処理は、砂などを高速で噴射し、塗膜を削り取るのが主流。それに対して、粉塵の飛散や産業廃棄物の発生を大幅に抑制できるうえ、レーザー照射により鋼材の表面に酸化被膜を形成し、新たなサビの発生を防ぐことができる。
 
「レーザーは穴あけや切断などピンポイントで使われるケースが多いのですが、私は、大きな面積を早く、安く、正確に処理できる手段の開発を目指しました」と豊澤社長。その結果、自然に円を描くようにレーザーを照射する装置が出来上がり、効率よい熱の伝導によってスムーズに塗装やサビを除去できるようになった。

■知らないうちに専門知識が身についていた

左から沖原准教授、豊澤社長、藤田教授

豊澤社長と本学は中部電力の研究所と共同で、原子力発電所の機器や壁面に付着した放射性物質の除去にも取り組んでいる。その他、製造業の現場で部品などの表面に付着する汚れをクリーニングするなど様々な用途を開拓中だ。
 
「塗装屋といわれるのがいやで新規事業の開発に着手した」という豊澤社長。現在は、レーザー照射による表面処理の標準化にも取り組んでいる。過去、レーザーで構造物の表面をきれいにする産業はなかったため、標準化によって産業展開が加速すると期待する。さらに「安全性が担保されれば家庭内の用途も考えられる」と読んでいる。
 
最後に豊澤社長に本学在学中の感想を聞いたところ、次のような答えが返ってきた。
 
「まったく畑違いでレーザーの基礎知識もない人間を受け入れていただき、知らないうちに専門的な知識が身についていました。業界の専門用語や独特の慣習を先生方にくみ取っていただき、また授業以外の野外活動でも二人三脚できる環境を用意していただけたので、当初の目標が達成できたと感じています。お互いに持っているものを議論するステージがあったので、毎回打ち合わせが楽しかったですね。

指導教員からのメッセージ

現場の困りごと解決の相談が始まりでした。 藤田和久 教授

豊澤さんと出会ったのは、現場の困り事の解決を求め、先代の社長と共に本学に相談にこられたときです。レーザーの既存技術では豊澤さんの業界で満足のいくものがなく、現場で役に立つものを新たに作る必要がありました。新しいので「常識」を疑う必要がありましたが、やってみると意外に出来たりするものです。このトライする軽さ(やらまいか)と学術的な裏付けをうまく融合させながら、沖原先生のレーザー装置に関する知見を活かし、装置作りが進みました。
これらを支えたのは豊澤さんの経営者としてのビジョンです。現場を、業界をこうしたいという想いを共有しながら、社員の皆さんと共にモノ作りに反映させています。その後、豊澤さんはこの事業を第二創業の柱として社長に就任されました。会社を新しいステージに載せ、今後の発展がとても楽しみです。
機を掴めた人 沖原伸一朗 准教授

豊澤一晃さんはこれまでの事業展開におけるテーマ・技術・人(ネットワーク)・資金等について、それぞれのタイミング(機)を非常に上手く掴めた方です。世の中の動向に適したテーマ設定、先端技術の取り込み、人脈形成、資金獲得など、側にいると水が流れる如くに自然と主要な所を押さえていました。
例として"技術"については、当時新興のレーザー装置が利用できることにいち早く気付けたこと、また、それまでの常識を否定して独自路線の機構を着想できたこと、着想を実現できる企業と初期段階でマッチングできたことなど、今思うと不可思議な光に導かれた様でした。後付けでこれらを分析すると、技術については豊澤さんが上手く事業を発展させられる下地のある本学等を選択し、それら信じた結果、本学等々がそれに応えたということだと思われます。信じた同氏もすごいですが、それに応えた本学等もすごいことになります。我々としてはこれからも同氏に答えることでその力を強め、他へも活かしていきたいと思います。
2016年4月掲載