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次のことを考えるのが中小企業の社長の仕事。大学は会社の未来を拓く場所でもある。 株式会社内山刃物


次のことを考えるのが中小企業の社長の仕事。大学は会社の未来を拓く場所でもある。

株式会社内山刃物 代表取締役 内山文宏 さん

Profile:1965年浜松生まれ。静岡大学工学部卒、地元電気メーカーにて研究開発部勤務の後、内山刃物に転職し、1996年代表取締役に就任。2013年本学入学

株式会社内山刃物 静岡県浜松市中区領家3丁目8番1号 TEL. 053-461-5320 
事業内容:ダイヤモンド刃物、超硬刃物製造販売

■3度目の正直の補助金申請

指導教授である坪井教授(左)と内山社長

内山さんが光産業創成大学院大学に入学した理由は「サポインの採択を受けたかったから」と明快だ。サポインとは「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」に基づく中小企業支援施策。中小企業や小規模事業者が大学や公設の研究機関などと連携して行う研究・開発・販路開拓の取り組みに対して、補助金等の支援が施される。

2013年の冬から夏にかけて申請した2つの補助金は両方ともNG 。その直後、内山さんは、“本学に入学して補助金申請に通った先輩経営者”の話を聞いて、躊躇することなく入学を決意。そこから本学と内山さんの熱い関係が始まった。

「1回目のサポインが不採択だとわかったのが8月、その2ヶ月後の10月に入学しました。春まで待っていたら翌年のサポイン申請に間に合わないと思ったからです」と内山さん。本学に入学して研究開発テーマを「新しい工具をつくる」から「新しい工具を作るための新技術開発」へと軌道修正し、着々と準備を進めた。入学から半年後の2014年6月にサポイン再申請、そして8月には念願の採択を果たした。

■社長が大学に通うということ

内山さんの会社は従業員10名。社長が大学に通うことは1割の戦力ダウンを意味する。「ですから入学前に社員とじっくり話をしました。自分が抜けると会社のどこに問題が起こるか、そこを誰がサポートするか……」。社員から見れば、仕事の負荷が増えるし、意思決定者が現場にいない不安もある。それがわかっていても「社長が自分の時間の100%を現場の仕事に使っていたら、会社の次のことができない。未来のことをやるために大学に行く」と説得した。「補助金をとるために行く、という言い方もしましたので、周囲は納得せざるを得なかった」と笑う。振り返ってみれば、社長が会社にいない間、社員に権限移譲せざるを得ず、結果として社員の自立を促すことにもなった。

内山さんが社長を務める株式会社内山刃物は創業1961年。1996年に父親から家業を引き継ぎ、弱冠30歳で社長になった。それまでの主軸の事業は木工工具だったが、家具市場の急速な縮小の影響をダイレクトに受けて顧客が激減していた。「社長としての私の最初の仕事は新しい市場を見つけることでした。たまたま開発依頼されたポケベルの樹脂の窓を加工する工具が好評で、樹脂加工用の刃物の製造へと転換することができたのです」。

それから約15年、ポケベルからケータイへと樹脂加工のニーズに対応するうち、突如、ガラス窓のスマホが現れて、樹脂用工具の需要が激減。次のニーズを探るべく足を運んだのが、本学と浜松工業技術センターが共催する「レーザーものづくり中核人材育成講座」だった。「ここで、次世代の材料として、ガラスと樹脂の複合材料が注目されていることを知り、それに対応する刃物を開発しようと考えた」と内山さん。これが新規市場へ目を向けるきっかけになり、本学への入学を後押しすることにもなった。

レーザーを使った複合材料用工具の製造方法を確立した現在、内山さんは「製造業の海外移転がますます進むこれからは、製造より川上の開発局面に貢献する工具を開発していきたい」と言う。次なる目標に向かってすでに進み始めている。

指導教員からのメッセージ

大学のあらゆる機能をビジネスに活用 坪井昭彦 教授

内山さんとは、彼が本学主催の中核人材育成講座に参加されたときに出会いました。第一印象は「熱心な方だな」。レーザは初心者と言われていましたが、それにしてはとても熱心に参加されていたので、よほど明確に目的意識を持ってこられたのだなと感じました。
毎回の講座終了後も質問攻めでした。その内容も講義に関するものではなく、「自分はこういうことをしたいのだが、そこにレーザをどう使えばいいのか」といったものが中心。自分のビジネスのなかでレーザをどのように使うかというビジョンを明確に持っているのがわかりました。
講座期間終了後に入学をされたのですが、入学する前から頻繁にメールのやりとりをするなど、一緒に走り続けてきました。明確な目的意識、目標意識をもって、その解決のために大学に入って来られたので、ここで何かを教えてもらうというより、大学のあらゆる機能をビジネスにうまく取り込もうといった貪欲な姿勢を感じましたね。

優れた巻き込み力をもっている方です 楠本利行 助教

内山さんは周囲を巻き込むのが非常に上手な方ですね。ご自身がとても真面目だし、頑張っていることがわかりますので、周囲がサポートしたいと思ってしまうのです。
学内だけでなく、学外でもメンバーを増やしていって、そのチームが何か始めようというときには中心人物になっている、そういう方です。ソフトボールの指導者をされていますので、そういう意味でもチーム作りが上手なのでしょうね。
サポインで事業計画が採択されてから、開発した装置の使い方を指導するために内山さんの会社に行ったりしたのですが、そこでも周囲の人を活用するのが、とても上手と感じました。
2016年7月掲載