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本学で学んだ論理的思考をベースに 30年、40年、50年先の地域のあるべき姿を追求したい。 浜松いわた信用金庫


本学で学んだ論理的思考をベースに 30年、40年、50年先の地域のあるべき姿を追求したい。

浜松いわた信用金庫 ソリューション支援部 新産業創造室(FUSE)石井彬史さん

Profile
地元の信用金庫に入庫後、8年間の営業経験を経て、庫内のシリコンバレー職員派遣制度に応募。4代目の派遣職員に選ばれた。2023年から2年間の派遣を前に、本学に入学。現在は、新産業創造を担う本業と並行して、地元浜松を代表する光産業分野で新産業の創成を目指している。

GPIで経験を積み、シリコンバレーへ
見える世界が絶対違うはずだから

浜松いわた信用金庫 法人営業部 新産業創造室 係長 石井彬史さん

光産業創成大学院大学がある静岡県浜松市。その中心市街地に、2020年春、新しいコンセプトの起業家支援施設が仮オープンした。名前は「FUSE」。さまざまなバックグラウンドを持つ人の交流から、新産業の芽を生み出そうという野心的な施設。石井さんが所属する浜松いわた信用金庫(以下、「金庫」)が運営する。

石井さんはこのFUSEのスタッフであり、本学の学生でもある。2023年には金庫からシリコンバレーに派遣され、さまざまなミッションに携わることになっている。

金融機関と光産業。一見、関係を見つけるのが難しい取り合わせだが、浜松という土地柄を見ると納得がいく。2013年に本学を含む市内の3大学と浜松ホトニクスが共同で「浜松光宣言」を掲げ、光の応用技術による産業創成に力を入れる地域。石井さんが所属する金庫も同じエリアを地盤とし、地域産業の活性化に力を入れる中で、その一翼を担う光産業に対する期待は大きい。

石井さんが本学に入学して習得しつつあるものは幅広い。その一つが論理的思考だ。

「GPI入学以前の私は、取引先や同僚との議論では、どちらかというと精神論で走ることが多かった。でも本学では、全体ゼミや講義でディスカッション、また普段何気なく行われている学内での会話から、入学前と比べてだいぶ論理的思考が身についてきた」と言う。

「この論理的思考を金庫に持ち帰ることができれば、金庫の経営にも生かせるはず」と、送り出してくれた金庫にどう貢献するかを常に考えている。

本学は技術系の社会人学生が主体なので、石井さんのような文系人材は珍しいが、新しい光産業の創出という観点から見ると、経営面を熟知した人材はニーズが高い。

とはいえ、光技術に関わるカリキュラムは文系人材にはハードルが高い。これに対する石井さんの考えは明快だ。

「幸い、本学は少人数制なので、講義の時も学生は少ない時では一人か二人。もう一人の学生が技術面を熟知していれば、彼と先生との会話が勉強になります。どの先生が何の研究をしているかがわかるようになれば、後々、地元企業から課題を寄せられた時に、適切な先生とつなぐことができるようになる。」

インタビューを通して理解した理事長の目線が
これから目指すべき方向を決めた。

FUSEのメンバーと

本学の入学試験ではビジネスプランのプレゼンテーションが求められる。石井さんが発表したテーマは「浜松版エコシステムの構築」。シリコンバレーに範をとり、浜松地域の企業・事業者が直接・間接的に関係し、共生しながら持続可能なシステムをつくる道筋を探ろうというものだ。入試時点で4年後に予定されていた、シリコンバレー派遣も視野に入れてのテーマ設定である。

ところで石井さんの大学の専攻は法学部。信用金庫に入社したのは、「一つの業界に偏るよりも、いろいろな業界の多くの人に出逢いたい」という理由からだった。シリコンバレーに特に興味があったわけではなかったが、ある日、突然、転機が訪れた。入社7年目、当時配属されていた支店で、シリコンバレー視察から帰ってきた支店長が熱く語る現地の様子、世界最先端の街を写した写真に魅せられた。

「シリコンバレーでは、最先端のIT技術を使った仕組みが、日常の中に溶け込んでいました。無人店舗のAmazon Goやテスラの展示場の写真を見せてもらって、“日本とアメリカはこんなに違うんだ!”と感動したんです」と石井さん。

数年前から庫内で始まっていた「シリコンバレー派遣制度」に想いが至り、「次に公募があったら、絶対に手を挙げよう」と密かに決意した。

2019年3月、待望の庫内公募開始。ところが応募条件は「年齢40才程度」。当時、石井さん28才。あきらめきれずに支店長に相談したら「ちょっと年齢的には若いけど、挑戦したら?」と背中を押してもらった。しばらくたつと年齢規定が「40才程度まで」に変更になっていた。「呼んでいる」と思って応募したところ、4代目の派遣者として選ばれた。

本学での研究・経験を活かし、シリコンバレーに行って、浜松版エコシステムを探求する。そこまでのシナリオはできている。では、そのあとはどうしたいのか。

「まずは大学やシリコンバレーでの貴重な経験を生かして、もっと金庫の魅力や信頼を磨き上げていきたいです。その先は30年、40年、50年先の金庫と地域の目線でものを見られるようになりたい。そのために今何ができるか、いつも考えています」

大学の研究の一環で、派遣元の金庫の理事長に2時間にわたるインタビューを行った。指導教員にサポートしてもらい、自身の研究テーマに関わる知見を理事長から直接聞き取るのが目的だ。
「理事長の熱く語る様子、話す内容から、マネジメントの目線を理解することができました。これも、本学に入学したからこそできたことです。」

普通に働いていたら絶対に見ることができない世界を、理事長の目線を通して垣間見ることができた。これが石井さんの将来展望を大きく変えた。
シリコンバレーと浜松、光技術と地域の経済を結び付けてどんな未来を描けるのか。長い視野で応援していきたい。

指導教員からのメッセージ

浜松の未来を担う若者  姜理恵 准教授

石井さんの第一印象は「体育会系の元気な若者がやってきた」の一言につきます。講義でもゼミの場でも、口にするのは「野球に打ち込んできました!」「シリコンバレーに行きます!」の二点張り。「これはかなりの脳内構造改革が必要だ」と思ったものでした。(笑)

ご本人は、博士論文の意味も知らぬまま企業派遣の形でGPIに入学してきましたが、多様なバックグラウンドを持つ学生さんや教職員との対話を通じて、論文執筆がどういうものかを理解し、研究過程で「何を明らかにするのか」という問題意識が研ぎ澄まされてきたのではないでしょうか。

ゼミでのディスカッション

入学から一年経過し、石井さんの研究はやっと端緒についたばかりですが、乾いた土にどんどん水が吸収されるように、多くの知識を次々と吸収し日々成長していく姿が見て取れます。博士号取得迄の道のりは長く険しいものがありますが、山頂に上り切った暁には見える景色がこれまでと全く違ってきますので、是非最後までやり切って欲しいと思います。

また、GPIに、金融実務に従事する石井さんが入学してきた意味は大きいと思っています。起業であれ新規事業開発であれ、それらを実現する上で「お金」は欠くことのできない経営資源です。私は、頻繁に「お金」を企業活動や社会経済活動における「血液」に例えて説明しますが、血液が常に滞ることなく体内を循環するように、お金の流れも滞ることなく必要な時に必要な場所へ流し循環させなければなりません。

ご自身も認識しているとおり、信金マンでありGPIの学生である石井さんの役割は、光技術を駆使してモノやサービスを創ることではありません。それらの新たに生み出されたモノやサービスを市場と繋げ、適切なタイミングで資金を流し、社会経済活動の循環の中に導くことです。

世の中で成功するには「運・鈍・根」が必要と言われます。本学に入学し、大学での活動を温かく応援してくださる所属先の上司・先輩に恵まれた石井さんは確実に「運」が良い人です。また、「鈍」はご本人の天性の性格であり、スポーツで鍛えた「根」は誰にも負けないことでしょう。
この三つが揃っている石井さんが、GPIで無事研究を修め、シリコンバレーで視野を広げ、そして、所属先の事業活動と未来の浜松を牽引していくことを私は大いに期待しています。