准教授 内藤 康秀
- TOP
- 教員・研究
- バイオフォトニクスデザイン分野
- 准教授 内藤 康秀
内藤 康秀
Yasuhide Naito
光技術と質量分析の融合で新産業の芽を創出
准教授 / 博士(工学)電気通信大学
専門分野
- 質量分析
- イオン光学
- 物理化学
- 健康・ライフサイエンス関連産業
対応事項
- 技術相談(質量分析全般、真空技術)
研究者のテーマと企業が持つ技術が出会いイノベーションが生まれた
究極の質量顕微鏡につながる
全く新しいイオン化手法DIUTHAME(ジュテーム)の開発
そして、DIUTHAMEの機構解明・改良・普及
私は質量顕微鏡の研究に長く関わってきました。質量顕微鏡は分子の質量をはかる顕微鏡で、計測のためには分子をイオン化する必要があります。イオン化する方法の中にはレーザーを使うものがあり、その中心はマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix-Assisted Laser Desorption/ Ionization:MALDI)と呼ばれるものです。MALDIは解像度の限界が5マイクロメートル程度。私が目指す質量顕微鏡の精度は、細胞の中身を観察できる1マイクロメートル以下でしたので、ゴールに到達するためにはイオン化の方法から検討しなおす必要がありました。
ところが新しいイオン化の方法はそう簡単には見つかりませんでした。何かネタを探そうと、さまざまな場を求めて模索していたところ、ある企業の社内イベントに本学の教員も参加できる機会があり、そこでたまたま目にしたのが、微細加工でアルミナ薄膜に規則的に貫通孔を配置した構造の基板(Through Hole Alumina Membrane)です。このときに、ひらめくものがありました。この技術が新しいイオン化の方法として使える、と直感したのです。恐る恐る企業側に「自分の研究テーマに使えそうだ。うまくいくと実用性がある」と話を持ちかけ、大胆にも「試作の基板があったらください」とお願いしてみました。コトは意外なほどスムーズに運び、共同研究へ。後から聞いたら、企業側もこの技術の応用分野を探していて、私の申し出が“渡りに船”だったようです。
ところが、当初は期待した結果がなかなか得られず、共同研究は長期化して何度か打ち切りの危機もあり、大変苦労しました。ようやく良い結果が得られたので学会の研究会で発表をすると、興味を示してくれる人が出てきました。何人かの研究者に基板を貸し出し、私とは異なる知識や設備を使って評価をしてもらううち、「この方法は本当に使える」という認識が広まりました。
こうして新しいイオン化支援基板DIUTHAME(Desorption Ionization Using Through Hole Alumina MEmbrane)が製品化されました。DIUTHAME(ジュテーム:フランス語で「je t’aime:君を愛している」の語呂合わせ)は開発までの苦節をとおして育まれた強い思い入れを反映した命名です。
ところが新しいイオン化の方法はそう簡単には見つかりませんでした。何かネタを探そうと、さまざまな場を求めて模索していたところ、ある企業の社内イベントに本学の教員も参加できる機会があり、そこでたまたま目にしたのが、微細加工でアルミナ薄膜に規則的に貫通孔を配置した構造の基板(Through Hole Alumina Membrane)です。このときに、ひらめくものがありました。この技術が新しいイオン化の方法として使える、と直感したのです。恐る恐る企業側に「自分の研究テーマに使えそうだ。うまくいくと実用性がある」と話を持ちかけ、大胆にも「試作の基板があったらください」とお願いしてみました。コトは意外なほどスムーズに運び、共同研究へ。後から聞いたら、企業側もこの技術の応用分野を探していて、私の申し出が“渡りに船”だったようです。
ところが、当初は期待した結果がなかなか得られず、共同研究は長期化して何度か打ち切りの危機もあり、大変苦労しました。ようやく良い結果が得られたので学会の研究会で発表をすると、興味を示してくれる人が出てきました。何人かの研究者に基板を貸し出し、私とは異なる知識や設備を使って評価をしてもらううち、「この方法は本当に使える」という認識が広まりました。
こうして新しいイオン化支援基板DIUTHAME(Desorption Ionization Using Through Hole Alumina MEmbrane)が製品化されました。DIUTHAME(ジュテーム:フランス語で「je t’aime:君を愛している」の語呂合わせ)は開発までの苦節をとおして育まれた強い思い入れを反映した命名です。
投影型質量分析イメージングによる質量分析学の革新
物質が何なのか、どのような元素でできているのか、などをきわめて正確に知りたいとき、原子や分子をイオンにして、精密な質量を測る質量分析法は、ミクロの世界での物質の成り立ちを調べる上で決め手となる技術です。鉱工業などの各種産業分野やバイオ、医療で広く利用されています。
質量分析をベースにして、原子や分子の情報を得るだけでなく、物質中でのその位置や分布状態を観察できる「質量顕微鏡」を開発しています。対象物質にレーザーをあて、飛び出してくるイオンを質量分析しながらイオンが形作る像を顕微鏡のように観察できるユニークな装置であり、例えば細胞の中で医薬品成分がどのタンパク質に働きかけているかを調べることができるようになると期待されます。
質量分析をベースにして、原子や分子の情報を得るだけでなく、物質中でのその位置や分布状態を観察できる「質量顕微鏡」を開発しています。対象物質にレーザーをあて、飛び出してくるイオンを質量分析しながらイオンが形作る像を顕微鏡のように観察できるユニークな装置であり、例えば細胞の中で医薬品成分がどのタンパク質に働きかけているかを調べることができるようになると期待されます。
主要な社会貢献活動
1)中部エリア及びその周辺地域における質量分析の発展と振興
日本質量分析学会 中部談話会の世話人代表を2021年6月から担当しています。学術研究の発展に加えて産業技術や専門技能としての質量分析の発展と振興を目指し、年3~4回のセミナーを開催します。
It’s NEW
1)Top Downloaded Paper 2018-2019 in the journal: Rapid Communications in Mass Spectrometry (Wiley)
質量分析分野における著名な国際学術誌Rapid Communications in Mass Spectrometryに掲載されたDIUTHAMEの論文が、2018-2019年の最多ダウンロード論文として出版元のWileyから表彰されました。
キーワード
- 高空間分解能イメージング質量分析(質量顕微鏡)レーザーアブレーション、質量分析、最先端の質量分析機器関連技術、利用法、応用技術、機器の改良
- イオン検出器技術 3次元(t, x, y)イメージング検出、検出器周辺パルス回路、高速信号処理(波形記録、波形演算)、データ処理(マススペクトル処理、イメージ可視化処理)
- 質量分析用イオン化技術 レーザーアブレーション法との組み合わせ、レーザー脱離イオン化法、その他の各種イオン化法